住信為替ニュース

THE SUMITOMO TRUST & BANKING CO., LTD FX NEWS

第1278号 1996年05月13日(月)


UNEXPECTEDLY WEAK DATA SPURS MART
 先週金曜日のニューヨーク市場は、「ミニ・トリプル高」になりました。穀物高や景気の再加速観測で俄然「インフレ懸念」が高まった中で発表された4月のPPIが、予想外の低い数字となって債券が大きく買い戻されたことから、株もドルもつれて上昇した。
 債券は、指標30年債の利回りで木曜日の7.01%から6.90%に、株はダウで43ドル上げて5518.14ドルと7ヶ月ぶりの高値に、そしてドルは対円で前日の104円台後半から105円台の半ばに。株で言うと、ダウよりNASDAQの上げの方が大きく、COMPOSITE INDEXは14.94ドル上げて1202.77ドルとこれまでの高値である5月1日の1199.66を越えた。
 PPI(卸売物価指数)の数字そのものは既にご存じでしょうが、全体が0・4%、エネルギー、食料品を除いたコアが0.1%の各上昇。予想は前者が0.5%、後者が0.2%でしたからそれほど違わないのですが、市場が全体として高い数字を頭に置き、ポジションが「ショート」に傾いていたのが、数字が出たあとの債券、株、ドルの強い買い戻しにつながった。
――――――――――――――
 コンポネントを見ると、エネルギーこそ2.8%アップ(3月は2.4%アップで4月の上昇幅は昨年12月の3.8%以来)と大幅な上昇を示したものの、一番騒がれていた食料品は、0.3%の低下(3月は0.6%の上昇)。野菜卸売価格が15.5%も下がったのが、食料品価格全体の低下につながった。

TWO CAMPS IN THE WALL STREET
 PPIの数字で「インフレ懸念」を一端納めた形の市場は、今週は火曜日に発表されるCPIや、景気の強さを図る尺度としての同日発表の小売売上高(4月)、それに水曜日発表の鉱工業生産、設備稼働率(ともに4月分)に関心を移すでしょう。
 これは「先取り」が大前提の市場のある意味では「拙速」であり、「ショートカット」なところかも知れませんが、市場の発想は

「商品価格の上昇→インフレか」
 「景気の力強い回復→インフレか」

 となっている。確かに70年代、80年代はそうだった。加えて市場が「金利は上がらない」との観測になっていたあとでは、ポジション関係からもこの観測をひっくり返すような数字が出ると、市場は逆に振れる。つまり金利が上昇する。
 昨日の「東京マーケット・フォーカス」でも取り上げましたが、「商品先物価格の上昇」が「最終食料品価格の上昇」につながるためにはいくつかの関門がある。昨日も紹介したクラフト・フーズのCEREAL製品20%値下げでは、「競争があって」という理由になっていた。つまり、競争が激しいときにはメーカーは原材料価格が上昇しても製造過程でコスト引き下げの努力をして、消費者の手に渡る最終製品価格を上げられない。この競争を可能にしているのは、技術革新と市場経済の拡大です。また「時間の関数」でいうと、上がりだした先物価格が直ちにメーカーの仕入れコストの上昇につながるわけではない。まだ安かった時に締結した「契約」の残期間がありますから。またセクター的に言うと上がっているのは穀物、原油など一部に限られている。
 「景気回復→インフレ」という発想も、一世代前のものかもしれません。この場合、「景気回復とはなんぞや」を考えておく必要がある。結構曖昧な言葉です。企業業績の回復か、国民所得の増大か、雇用の増加か、それとも成長率か。過去においては、この曖昧な言葉の結果として、「物価上昇」の事実があったことは確かです。あちこちにボトルネックがありましたから、パイプが詰まり易かった。今はどうか、市場経済のスパンが著しく広がり、ネットワークが一般化した中では、昔のような「ボトルネック」は、かつてほど多くない。ボトルネックをバイパスしようとの力が働くからです。市場経済のスパンが広がり続け、技術革新の中でネットワークが深度を増す中では、そういったことが可能になるとも考えられる。
――――――――――――――
 ウォール・ストリートでも議論が分かれているようです。昨日も紹介した土曜日のインターナショナル・ヘラルド・トリビューンの9面左下の

 「CAN COMPETITION RESTRAIN INFLATION ?

 は頭を整理するにはちょうど良い記事です。一つのキャンプ(勢力)は、「過去10年は商品価格と労働賃金がわずかな上げにとどまってきた。これからの10年は商品価格も労働賃金も上昇し、インフレは上がる」と主張する。デービッド・ジョーンズなどです。穀物価格については、「アジアの需要増大」という「構造的」と思われる背景もある。
 これに対して、「いやいや競争が厳しい。技術革新もあるし、労働賃金への下方圧力も続くから少々の商品相場の上昇、景気の回復では先進国ではインフレは起きない」と主張する。FEDの理事たちがインフレ懸念沈静化努力の中で強く指摘するのは

  1. 依然として労働賃金の上昇ペースはゆるやか
  2. 市場が先取りで長期金利を上げれば、景気そのものが鈍化する

と言う点です。
穀物相場がしばらく上げ続ける(原油は先折れの観測が強い)としても、経済全体を脅かすインフレになるかどうかは、しばらく労働賃金の上昇ぶりを見る必要がありそうです。

SUPER-STAR VS A POLITICAN
 ところで、先週の土曜日の日経夕刊、それに今朝の朝日に面白い記事が載っていましたね。「マイケル、公演やめないで=独蔵相訴え」(日経)。記事の中身から推測すると事態は次のようです。

→ドイツは経費控除を認めないなど、外国人芸術家に対する税率を引き上げた
→これに対して、近くドイツ公演を予定していたマイケル・ジャクソンが「そんなに  税金をとられる国には行かない」と言ってドイツ公演をキャンセルした
→ドイツのマイケル・ファン(女性中心でしょう)から非難の声が税率担当のワイゲ  ル蔵相に対して沸き起こった
→そこで、政治的立場を大事にするワイゲルがあわてて「経費が売り上げの50%を  越えれば控除の制度がスタートする....」と言ってマイケルに再考を促すため  手紙を出した

 ということのようです。国境を越えて活躍する世界の「スーパー・スター」対国内事 情で税率の引き上げを迫られる「ある国の政治家」。マイケルにして見れば、ドイツのファンは世界全体から見れば極一部。「あっそう。じゃあ....」といった程度でしょう。「DE FACTO STANDARD」が国家に対して持つ優位性がよく現れている。マイケルは結局どうするのでしょうか。マイケルも来ない「いなか」国では、ドイツ国民もつらい。無論、こなくてちょうどいい、という人もいるでしょうが、相手が国民に対して雇用や所得を生み出す「スーパースター的」企業(規模の大小は問いません)だったら話は全く違う。富を生み出す企業から「いなか」だとは思われたくないものです。
 日本も税金は高い。我々の払った税金はいったいどう使われているんでしょうか。魅力のある国で有り続けて欲しいものですが、土曜日の日経朝刊の「経済教室」に通産省の企業行動課長の望月さんという方が日本の税制にかかわる問題点を指摘されている。よく知りませんが、「企業行動課」というのがSOUNDS NEWでいいですね。ドイツの税率と日本の税率を比較しても面白いかも知れない。

A LETTER FROM GERMANY
 ところで、ドイツと言えば、先週二度目の着任したばかりの知人の記者の方からメールをもらいました。今までも頻繁にメール交換してきた人ですが、「着任報告」が面白いので、本人の承諾を得てこのニュースに掲載します。私だけで読むのはもったいない。ミニ「最新ドイツ事情」といったところ。(文章はそのままです)

(1)不動産。「ドイツにはバブルはない」と連銀幹部は言っていますが、金融センターのフランクフルトの不動産市況は氷河期(私には好都合)。オフィス空室率は20%近くに迫っており、あちこちに「貸します」の看板が出ている(日本語もある)。賃貸料は統一後のピーク時の30%安とのことで、「オーナーが大銀行や大保険会社なのでもっているが、実情は日本のバブル崩壊と同じ」という声も聞かれます。こんな中で日本の某長信銀がJapan Centerなる高層ビルを建てていますが、9月の完成後も多分ガラガラとなりそうです。

(2)景気。確かに悪い。しかし第1四半期で底には達したようです。ただし短期的な浮揚策は利下げ以外にないので、今後も低空飛行になるかもしれません(つまり金利も低空飛行)。4月末にコールが構造改革に向けた緊縮策を発表しましたが、中身は大部分、議会や労組、地方州の合意が必要となっており、これからのドイツは社会福祉などに見直しをめぐって諸勢力の戦いが予想されます。この戦いの鍵を握るのは公共労組の賃金交渉。雇用者の政府は今後2年間の賃金凍結を打ち出しており、現在進行中の協約交渉は大荒れとなりそうです。昨年のフランスの公共ストのような騒ぎとなり、間違いなしで「熱い夏」となると予想する人が多い。政府としては、この戦いで勝たなくては、緊縮パッケージが全部つぶれる公算大で、徹底的に戦うでしょう。

(3)社会。既に伊藤さんが昨年から指摘していた「ドイツを襲う経済のグローバル 化、大競争の時代」という認識は、指導層には強く浸透している。一部では変化が出て いるが、「規制社会、福祉社会を変えなくては」という国民的コンセンサスには至って いない。ただ、3月の地方選結果を見ても、「渋々ながら、それしかない」という気分はサイレントマジョリティーの間で強まっているようです。

MARK STILL UNDER PRESSURE
 だからという訳ではないのですが、今週の為替市場ではマルクの動向が引き続き注目点で、筆者は同通貨に対する売り圧力は続くと見ます。確かにリラなどに対するマルクの下げは大きい。ブンデスの一部に、「マルクがリラに対してあれほど下げて良いのか」という気分が出ているのは理解できます。ドイツはまた、欧州域内貿易の割合が高い国ですから、我々が想像してしまう以上に「対欧州通貨」でのマルクの地位を気にする。
 しかし、国際競争という点ではドルと円との関係も重要なはずで、この点について言えば、マルクの下げ余地は残っているし、ブンデスの高官の話を総合的に見ると、「マルク高修正」は終わっていないように見える。
――――――――――――――
 株、債券は引き続きボラタイルな動きを続けそうです。日本もアメリカも「もう一段の金融緩和」が望めないところに来ている。債券を持っている人には、一番悩ましいところです。短期金利との見合いでは持っていたい、しかし相場が下がれば評価は悪くなる。
 特にトレーディングではなく、ポートフォリオで持っている向きは難しい判断の時期ですから、市場は神経質になります。レンジで振られてやられないようにしましょう.....

HAVE A NICE WEEK
 ところで週末はいかがでしたか。天気はまずまずでしたが、昨日の夕方の雷(杉並だけかもしれませんが)はすごかった。時期的にはちょい速いと思うのですが、「都市型」というやつでしょうか。
――――――――――――――
 一つ、私のように「HOME PAGE」作りをしている人に朗報。「あなたの目の前のWORDが、HTML文書作成ツールに」という話。文章をインターネットに載せるにはHTMLという文法で書くのですが、結構面倒。そこでお助けマン。インターネットのMICROSOFTのホームページ(日本はhttp://www.microsoft.co.jpだと思いました)からINTERNET ASSISTANT FOR WORD95をダウンロードします。新しいフォルダを作ってやるのが良い。それをセットアップすれば、ダウンロードしたソフトが既に存在するWORDversion 7.0)にマージして、新しいWORDはソフトに早変わり。私の場合は、週二回書いているこのニュースをどうやってHTMLに返還するかが問題でしたが、これで問題はかなり片づいた。できたHTMLに画像を入れ、フレームを与えてやればよい(と思うのですが)。でもまだまだいっぱいやることがありますので、もうちょいお待ちを。
――――――――――――――
 最後に、久しぶりに食べ物の話をしましょう。この週末懐かしい物を食べたのです。「ライス・プディン」。ニューヨークにいたとき(といってもずっと昔ですが)は本当に好きでよく食べたのですが、日本に帰ってきたら米の本場なのにあまりない。ここ5年くらいは全くお目にかかっていなかったのです。ところがこの週末、ありましたありました。中野坂上でインド人がやっているカレー屋に結構うまいのがあって、懐かしかった。店の名前は忘れましたが、中野坂上駅で降りて、新中野の方向に200メートルくらい歩いたビルの3階。
デザートを言えばケーキ類に辟易とした人には、やはりなんと言っても「ざくろ」の「くずきり」がこの季節お勧めです。「ざくろ」は他の料理は「?」もあるのですが、「くずきり」は良い。それから、先週の金曜日に城島(スポット・チーフ)と南波(オプション・チーフ)に青山界隈で一番うまい寿司屋を教えてもらいました。あと青山でうまい蕎麦をどなたか知らないでしょうか。
こちらまで。<ycaster@gol.com
 それでは皆様には良い一週間を。長くなりましたが、先週末は曜日を間違えましたので。                               (了)


 当ニュース・レターは表記日時に作成された当面の見通しで、一つの見方を紹介したものです。最終判断はご自身で下されますようお願いします。このニュース・レターの許可なき複製、転送、引用はご遠慮ください。