ITとカースト:インド・成長の秘密と苦悩 日本の文化としてのカウンター
 Day by Dayのコーナーにようこそ。
 分析・解説記事としての「News & Analysis」、食道楽のための「EATING OUT」、勉強家のための「LINK」、そしてややまとまった意見・感想を載せた「CYBERCHAT」、友人達の論文を集めた「FRIENDS」のどこにもは当てはまらない情報や私自身の意見を、この「Day by Day」で拾っていきます。
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2008年10月11日(土曜日)

 (10:00)私が成田エキスプレスの中にいる間に発表されたG7後の声明では、以下の二つが重要です。今後それぞれの国が、「我が国はこれをやる」というのが出てくるでしょうが。むろん、「もうやった」という措置もかなりある。そういう意味では、斬新さに欠ける。

G7のPlan of Action

G7後のStatement by Secretary Henry M. Paulson, Jr.

 ともに米財務省のHPにある文章です。前者は「行動計画」ですから、G7に参加している国の当局が何をするかを述べているはずですが、個々の国が何をするとまでは書いてない。「urgent and exceptional action(緊急で例外的な措置を取る)」と述べて、その後に

  1. 金融システム保持の為に重要な金融機関の支援と破綻阻止
  2. 金融市場の目詰まり解消と流動性確保、資金調達への広いルートの確保
  3. 銀行やその他金融仲介機関の公募、私募での資本調達の促進と信認回復、それによる企業、家計への貸し出し
  4. 預金者の金融システムへの安心感維持の為の預金保護制度の拡充
  5. 住宅ローン、その他関連証券市場の再スタート、資産の適切な評価と透明性のある開示、高度な会計基準の一貫適用
 と。これだけだと一般的な措置を並べただけ。結局、G7に参加したそれぞれの国が何をするかは、この週末、または週明け後に何を発表するかに掛かっている。「行動計画」とした割には、列挙に終わっていて弱い。まあG7が出来ることはこのくらいかもしれない。だからこそ、ポールソンは期待値を下げる努力をしていた。

 今週大荒れになった市場は、各国の措置を見ないと安心しないのではないか。今までの措置の積み上げと、相場水準の大幅下方修正は念頭に入れる必要があるが、具体性に欠ける。「協調」も弱い。

 多分、この「行動計画」だけでは足りないと思ったのでしょう。ポールソンはG7後に声明を出した。下のリンクです。その中で一番肝心なのは、

We are developing strategies to use the authority to purchase and insure mortgage assets and to purchase equity in financial institutions, as deemed necessary to promote financial market stability. As we develop plans to purchase equity, as in the approach we are taking to broad mortgage asset purchases, we are working to develop a standardized program that is open to a broad array of financial institutions. Such a program would be designed to encourage the raising of new private capital to complement public capital. Consistent with the legislation, any equity the government purchases through a broadly available equity program would be on a non-voting basis, except with respect to the market standard terms to protect our rights as investors.

 まあアメリカの市場が落ち着かないと、そして欧州の金融機関やシステム維持の方式が揃わないと、そして可能なら日本も例えば流動性対策で一歩踏み出すとか協調を示さないと多分来週の市場もかなり荒れ模様となるでしょう。ただし今週のようには一方的な下げばかりの展開とはならないでしょうが。


2008年10月11日(土曜日)

 (06:00)朝起きて金曜日の引け直後のウォール・ストリート・ジャーナルを眺めたら、どえらい見出しの連続。

  1. ダウ、1000ドルのスイングのあと128ドル安で引け(NASDAQは小幅高)
  2. モルガン・スタンレー、一ケタドル台に急落、ゴールドマンも大幅安
  3. 石油価格、80ドルを下回る
  4. GEの利益が22%減少
  5. 朝方の600ドル安からの反発にもかかわらず、今週一週間のニューヨーク・ダウの下げは18%に達し、112年のニューヨーク証取の歴史で最悪
  6. The U.S. is weighing two dramatic steps to repair ailing financial markets: guaranteeing billions of dollars in bank debt and temporarily insuring all U.S. bank deposits(銀行債務の保証と全銀行における全預金の一時的保護という二つの劇的措置で、病む金融市場を修復する方向でアメリカは検討中)
 相変わらず動きが激しい。朝方600ドル以上下げて寄り付き、引け際には一時300ドル高があったが、引けで128ドル下げた、という展開らしい。午後の引け際の反発を支えたのはシティバンク(9.1%高)やJPモルガン(13.5%高)などの銀行株の上げだったという。「なぜ」はこれから調べないと行けない。空港に着いてからか。

 しかし、まだ良く読んでないが、モルガン・スタンレーやゴールドマンは急落したということは、旧インベストメント・バンク業態への不信感や個々の企業への格下げがあったということでしょう。寝る前に聞いたブッシュ大統領の演説は、その時点では株価を押し下げただけの効果だったのですが、確かに不良債権買い取りに関する法律に触れた中で「銀行への資本注入」の可能性を示唆していた。今朝の日本の新聞の見出しはこれになっているが、アメリカの新聞はあまり大きくない。8分間の演説の最後の方だったと思った。

 G7の声明は現時点では出ていない。今から一時間後らしい。CNBCを見ていたら、ローレンス・サマーズなど識者が次々に出てきて、「lack of」の後に「trust」とか「confidence」という単語を繰り返し使っている。サマーズは、「銀行間の、そして国民と政府の、そして政府とウォール街のトラスト(信認)の欠如」が問題だと。だとしたら、その相互不信を育てたのは何だったのか。金融機関は相互にやっていることを知っていたはずで、「だからこそお互いに信頼できない.....」ということか。

 昨日自分のアメリカに書いていた文章を思い出した。ちょうど二年前の10月の中旬にニューヨークに滞在した際にまとめたもので書いた文章「Where are you going .....?」の一つの結果が今のウォール街の現状、今の危機に苦しむアメリカだったとしたら、悲しい。その時自問したことは、

  1. 滞在期間中の2006年の10月17日朝に人口3億人になったアメリカ。今後どれだけ人口を増やすのだろうか。EUをいつ追い越すのだろうか

  2. グローバリズムを唱えながら、ニューヨーク証券取引所の回りには頑丈な防御ポイントを設け、市場経済の心臓部を守ろうとするアメリカ。そしてメキシコとの国境には高いフェンスさえ作ろうとするアメリカ。やっていることが矛盾しているとは思わないのか

  3. 誰にでも夢を与えてきたアメリカ。しかし中産階級は限りなく厳しい環境に置かれていて、良い暮らしをしているが故に世界全体に対して寛大だったアメリカ人の心の根幹はゆらいでいないのか

  4. 豊かで強大になったが故に、世界中の人々から畏敬と畏怖を抱かれながら、しかし一方でそれ故に疎まれているアメリカ。イラクを初めとして外交が行き詰まる中で、世界における役割をいつか変えようとするのではないか

  5. しかしその一方で、マンハッタンのビルやコンドミニアム価格の急騰、米長期債に対する海外からの大量の資金流入に示されるこの国への信頼感の高さ。この国の魅力はいったいいつまで続くのか
 でした。アメリカ人も何が起こったのか、とこの週末はちょっと考えざるを得ないかもしれませんな。今回のニューヨークでは、結構面白い取材が出来るかも知れない。


2008年10月10日(金曜日)

 (06:30)ECOマネジメントのサイトに、新しいエッセイがアップされました。インドの急激なCO2排出大国化を扱っています。


2008年10月09日(木曜日)

 (13:30)二日も連続してノーベル賞の受賞者が出るなんて日本も実力、かつラッキーというか....と思ったのですが、まあアメリカなどは「連発」は珍しくないし、今回受賞した日本人のうち二人は基本的生活空間はアメリカですからね。世界のマスコミとしては、「アメリカ人の....」ということでしょう。

 科学者、化学者が研究しやすい場所を選ぶことは決して非難できないと思っているのです。だから今年はこんなに賞が取れたことは良かったとして、今後はどうなんだろうと逆に心配になる。

 私が聞いている範囲でも、基礎研究などの分野での日本の研究者が置かれた環境はどちらかと言えば劣悪だし、何よりも「食べていけない」という声を聞く。今の受賞を喜ぶだけではなく、将来もこうした受賞が続くような体制作りが必要な気がします。

 一方金融市場。昨日の協調利下げで、ちょっと今週末のG7は「具体策」と言っても明確には期待できない状況になってきたし、当局も「期待値」を下げる努力を始めたようです。ポールソンは以下のように述べた、とウォール・ストリート・ジャーナルに書いてある。

WASHINGTON -- Treasury Secretary Henry Paulson played down the chances that the Group of Seven major economic powers would unveil any global plan to confront the widening financial crisis.

On the same day that the Federal Reserve, the European Central Bank and other monetary authorities announced a joint cut in interest rates, Mr. Paulson said the G-7 countries will likely go their own ways when it comes to using tax or spending policies to respond to the credit crunch.

White House spokeswoman Dana Perino predicted that the G-7 meeting will "help make sure everybody is on the same page as we move forward since we're all so interconnected now."

 まあそりゃ国情は違う。かつ、G7としても期待値が高いのは辛い。それを下げておこうと。しかし実際にはフランスも公的資金の預金保護に乗り出したし、徐々に先進国がやっていることは必要なレベルに接近しつつある。加えて、以下のポールソン発言です。
WASHINGTONー Having tried without success to unlock frozen credit markets, the Treasury Department is considering taking ownership stakes in many United States banks to try to restore confidence in the financial system, according to government officials.

Treasury officials say the just-passed $700 billion bailout bill gives them the authority to inject cash directly into banks that request it. Such a move would quickly strengthen banks’ balance sheets and, officials hope, persuade them to resume lending. In return, the law gives the Treasury the right to take ownership positions in banks, including healthy ones.

 最後の「健全な銀行を含めて」....というところが重要です。日本も健全な銀行も含めて公的資金の注入を行って銀行の資本ベースを確かにして、仲介機能回復を手助けした。その結果、経済が回るようになった。

 FRBがCPを買ったり、企業に直接貸し出しをするような状況は決して好ましくない。そういう意味では、これだけの株の危機的な下げによって政治的な環境は整ってきている。あとは「どうしてこんなことになったのか」「次の体制はどういう形がよいのか」という今後を展望した形になるべきでしょう。

 今週の土曜日からのニューヨーク出張は、その辺が焦点です。


2008年10月08日(水曜日)

 (23:30)やはりやりましたか。やるなら協調が良いと書いてきたのですが、午後8時過ぎにケイタイに協調利下げの速報が。FRB、ECB、イングランド銀行、カナダ中銀、スイス国立銀行、スウェーデン中銀の6中銀がそれぞれ0.5%の利下げを発表した。

 FRBの声明は、世界的にもインフレ率は低下しているので、「世界的な金融緩和は正当化される」(Some easing of global monetary conditions is therefore warranted.)と説明している。

 6中銀揃っての0.5%協調利下げが「some easing」の範囲内かどうかは別にして、急がざるをえなかった理由の一つは、今日の東京で見られたような「節度を失った投げが続くことによる世界の株式市場の崩壊」を何とか避けたいという意志でしょう。

 ここ数日の世界の株式市場は、換金売りの嵐の中にある。ヘッジファンドやその他投資家から預かった資金を株式市場で運用していた運用者の投げ売りが続いている。この売りは、利下げがあってもお客さんの指示だから当面は続く。だから協調利下げがあっても直ぐに売りがなくなるわけではない。ある程度の「売り尽くし」が必要だ。また、アメリカや欧州を中心に金融市場が目詰まりしているという事情も変わっていない。

 しかし、時間が掛かっていて市場に近い人間には「遅い」と感じるが、当局の対応は徐々に整ってきつつあるように見える。出来ることからやっているという状況ではあるが、多くの国で実質的に銀行が国有化されたか、公的資金の注入により部分的に国有化された。国有化されれば、その銀行は金融市場で信じてもらえる。情けない話だが当面はそれで凌ぐしかない。

 肝心のアメリカでの不良債権の買い取りが始まっておらず、市場の人間にはその先に必要性が見える銀行への公的資金注入の展望が今はないのが不安材料だが、政治的プロセスもあるから一気に全ての措置が揃うわけではない。しかしFRBが次々に措置を打ち出せるうちに、アメリカ政府はそれを急ぐべきだろう。

 残念なことだが、相場のレベルが下がること自体が、市場全体の底入れの大きな力になる。市場は依然として不安定な、そして時に緊張感の漂うものだが、水準の低下に伴う市場の自律的な内部要因、それに政府の措置など外的な環境の変化は始まっていると見るべきだろう。


2008年10月08日(水曜日)

 (10:30)先週の土曜日の東京新聞のコラムに「中央銀行の出番」と書いたのですが、本当にそういう時代になった。今見たウォール・ストリート・ジャーナルには、「FRBが非金融機関に直接貸し出しをする」と書いてある。

The Federal Reserve said it will bypass ailing banks and lend directly to American corporations for the first time since the Great Depression, and it hinted strongly at further interest-rate cuts -- a cocktail of unconventional and conventional remedies for an economy whose prognosis is deteriorating rapidly.

The historic and potentially risky move of lending to nonfinancial corporations, the latest in a string of extraordinary steps taken by the Fed over the past month, carries the government deeper into the role of propping up private markets. Investors remain unconvinced any of it will work.

 大恐慌以来という非金融機関への直接貸し出し。今は資金を取れない銀行が金融の仲介機能を失っている。だとしたらCPを買い取ったり、直接的な貸し出しに乗り出さなくては成らない。FRBは利下げも検討しているようです。筆者は「協調利下げ」が良いと思っているのですが、バーナンキは7日の講演で次のように利下げを示唆した。
Overall, the combination of the incoming data and recent financial developments suggests that the outlook for economic growth has worsened and that the downside risks to growth have increased. At the same time, the outlook for inflation has improved somewhat, though it remains uncertain. In light of these developments, the Federal Reserve will need to consider whether the current stance of policy remains appropriate.
 調べたら、次のFOMCは今月の28と29日かな。それまで待てるかどうか。今週末に開かれるG7の会合が一つの切っ掛けとなる。そこで先進国協力しての対策を何らかの形で打ち出さなければ、市場を早期に安定化させることは出来ない。
All told, economic activity is likely to be subdued during the remainder of this year and into next year. The heightened financial turmoil that we have experienced of late may well lengthen the period of weak economic performance and further increase the risks to growth. To support growth and reduce the downside risks, continued efforts to stabilize the financial markets are essential. The Federal Reserve will continue to use the tools at its disposal to improve market functioning and liquidity.
 今回の不況の長期化に関するバーナンキの予測は、「もし何もしなかったら」という前提で出てきている。危機が深まれば深まるほど、当局が何かをしなければならない必然性が高まる。日米で株価は10000のレベルを下回った。ゼロにまで落ちる相場はないから、金融機能の少しでも回復すれば状況が変わりうる地点に差し掛かっているとも思える。


2008年10月07日(火曜日)

 (23:30)

アップ
ダウン
チャーム
ストレンジ
トップ
ボトム

 記事を読み進んで複合粒子である陽子や中性子を基本粒子として上に名前のあるクォークの名前に触れたとき、「へえ、案外親しみやすい名前になっているんだ」と思いました。最初の二つが第一世代、次の二つが第二世代、最後の二つが第三世代だそうです。

 ははは、はっきり言って「世の中の最小単位を突き詰めていくと、原子の構成要素として中性子と陽子があり、その中性子と陽子を作っているのが6種類あるクォーク.....ということしか分かりませんでした。

 しかしナノテクノロジーの知識を応用すれば、仮に人間が将来この6種類のクォークを自在に組み立てることが出来れば、なにせ物質の最小単位のわけだから「人間は何でも作り出してしまえる」ということになる。卵も鶏がいらないし、飛行機だって組み立てが出来る。何の素材もなしに......。

 ははは、分子や原子のナノの世界でも「自動組み立て」が難しいのに、クォーク組み立てなど所詮は途方もなく難しい作業なんですが、そんなことも考えました。大体が飛び回っていると聞いているし。しかも、クォークは理論物理で想像されている存在に過ぎないのに。

 南部陽一郎・米シカゴ大学名誉教授(87)と、小林誠・高エネルギー加速器研究機構名誉教授(64)、益川敏英京都大学名誉教授(68)の三人の方がノーベル物理学賞を受賞したというニュースは、御堂筋をタクシーで下っている午後7時半ちょっと前にケイタイ電話に入った速報で知りました。直ぐに同乗していた他の二人に知らせ、みんなで「へえ」と。全員マスコミ関係でしたが、日本人3人げ受賞というのは誰も予想していなかったような。少なくとも私は。

 でも嬉しかったな。何か「また日本の力が発揮された」というような印象を受けて。これも私の本の題名から取れば「日本力」ですから。なにかじわっとこみ上げてくるような喜び。ははは、人間は不思議ですな。「同じ日本人」というだけなのに。朝日新聞は3人が受賞した分野に関して以下のように説明。   

素粒子物理学は、宇宙の起源を解明する宇宙物理学の基礎にもなっている。クォークや電子といった基本粒子は約140億年前、宇宙誕生の際の大爆発(ビッグバン)による大きなエネルギーが生み出したと考えられている。

 究極の素粒子の本質を探る研究は、いまなお続く。物質がなぜ質量をもつのかを説明する理論も、実験で証明されたわけではない。

 このお三方のインタビューがなかなかユニークで面白い。読売新聞のサイトにこの3人に江崎玲於奈、野依良治の両ノーベル賞受賞経験者を加えた5人の電話会談が掲載されていて面白かった。「若手の奮起」を皆さん強調。

 ええことだと思う。日本人の研究、論文がこういう具体的な形で表彰の対象になるのは。だってこういう名前の通った賞でも取らないと、我々物理学などに関係ない人間は「理解しよう」とも思わない。まあ「対称性の自発的破れ」と言われても、それだけでは分からない。これも朝日の記事は分かりやすい形で、以下のように説明している。

 たとえば底が盛り上がったワインの瓶は上から見ると左右対称なのに、そこに小さな玉を入れると、玉は瓶底の中央ではなく、へりに近いくぼみに落ち込むようなものだ。瓶そのものは左右対称でも、玉まで含めた場合は「対称性」が失われている。

 日常感覚では、このような現象は当たり前で、人間の心臓が常に左側にあるように、左右の対称性がそもそも失われている。だが、素粒子はすべての物質の最も基本となる構成要素だ。どこから見ても同じであるべきで、どんな状況でも「対称性」が成り立っていると信じられてきた。

 しかし、南部さんは「素粒子の世界でも対称性が自然に破綻(はたん)するケースがありうる」と考えた。破綻するのは、対称性が失われた方がエネルギー的に安定する場合だ。一見、常識破りのこの考え方が、「質量の起源」を解き明かす研究の端緒となった。

 ここまで読むと、何となく分かった気になる。「素粒子の世界でも対称性が自然に破綻(はたん)するケースがありうる」と考えたのが素晴らしいと。これが50年も前の発想だったというのが素晴らしいですね。我々の日常生活には、「非対称」が溢れかえっている。本当に対称があるのは、絵画とかそういう世界の方が多い。


2008年10月06日(月曜日)

 (23:30)お台場で長い収録。時間がかかりました。午前10時過ぎにスタジオに入って、終わったのは午後6時ちょっと前。手順が悪かったわけではなく、やることが多かったため。「世の中進歩堂」は毎回勉強になる。昨日は日経新聞の番宣の取材もあった。

 その間にも、株価は大きく値下がりしていたような。世界的な株安になってきたのが心配で、特にヨーロッパは「連邦予算がない」(トリシェECB総裁)のが危機対応力を問われている。こうなったら、何をするにも「協調」でないとダメ。月曜日の朝に文章を書きました。

 最近の新聞はあまり面白くない。なぜなら、金融や経済に関する記事で一杯になってしまって、その他の世の中で起きていることに割かれる割合が少なくなってしまうため。まあそれも私の記憶でも戦後決してなかったようなインパクトの危機ですから仕方がない。

 ただし直感で言うと、案外危機からの回復は早いかも知れない。なぜなら、世界における需要は依然として強いからと、危機の進行も早いから。ただし負債をパイルアップさせすぎた経済(例えばアメリカなど)の回復には、そうでない国より時間がかかる。

 いずれにせよ、今週の土曜日からのニューヨーク出張は、どえらいタイミングの取材となった。見たいこと、聞いてみたいことは山ほどあり、感じることも多いでしょう。行っている間にも色々なことが起きそう。11月にも10日ほどアメリカに行きます。


2008年10月05日(日曜日)

 (21:30)ははは、改めて見ても異色の番組でした。BSジャパンの新番組である「世の中進歩堂」です。自分で言うのもなんですが、世の中金融危機で大騒ぎしていますが、世の中はその他の分野でちゃんと歩みを忘れていない。この番組を見れば分かります。ある意味でほっとする。

 先日も書きましたが、私自身にとってもこの番組にかかわることはすごく勉強になる。「ああ、こんな事もあったんだ、こんな技術もあるんだ」と。見ている方にも毎回驚きの連続になる。今夜の第一回(今後毎週日曜日午後8時30分 BSジャパン)をご覧頂けたら頷けてもらえたと思います。

 私には考え方の基本のようなものがあって、「世の中を変えているのは技術だ」というものです。それにぴったりの番組で、私が今までいろいろやった番組の中で「毎回勉強になる」と常に思うのはこれが最初です。

 相方が”女優”というのも刺激的。CMの女王(?)城間さん。今まではアナウンサーの方が多かったのですが、びっくりしたのはやはり女優は台詞覚えが速い。私はどちらかというと同じ事を機械的には言えない、「こう言って」と言われると決してそれが言えないタイプ。その点、彼女は凄いですよ。

 月曜日からまた仕事をしよう、新しい技術を知ろうと思ったら、日曜日の夜にこの番組です。今回のだと、遠距離恋愛支援システムとか電脳フィギュア(拡張現実)が面白交野ではないでしょうか。

 ところで、日曜日は比較的現在の金融危機に関するテレビ番組もよく見た日でしたが、論点がまとまった番組はなかったように思いました。午前中のテレビ朝日の番組ではもっと水野さんが喋れば面白かったのに、横のうるさい人が論点をぼかしていて残念だったし、NHKのディベートも過去と現状の切り離し、責任のありかの分別が良くできていないような気がした。切り口がポイントだと思いました。


2008年10月04日(土曜日)

 (18:30)ほんまにええ天気でしたな。今日は。日中数時間外にいましたが、年に何回かしかないだろうというような。外を歩いている非常に気持ち良かった。

 今日読んだ雑誌の記事などでは、日経ビジネスの「敗軍の将、兵を語る」で石破茂さんが総裁選敗北について語っていて、そこで明確に「総理大臣を目指します」「今回は小手試し」と述べていた点。石破さんが立候補したとき、「何でだろう」と思っていたのですが、これで得心がいった。

 獲得できた票は25票だったんですね。与謝野さんが66票で、小池さんが46票でしたっけ。分からないが、今後案外人気が出る可能性があるな、と思っているんですよ。マスコミ受けがするし、どんな問題にも的確に、多分ご自分のものだろうと思える意見を言う。あんまり裏表がない人のようにも見える。お会いしたことはないが。

 ところで、あんまり記憶にない声明をFRBのサイトに見つけました。FRBがこうした議長名の声明を発表するのは、非常に珍しい。

Release Date: October 3, 2008

For immediate release

I applaud the action taken by the Congress. It demonstrates the government's commitment to do what it takes to support and strengthen our economy. The legislation is a critical step toward stabilizing our financial markets and ensuring an uninterrupted flow of credit to households and businesses.

The Federal Reserve will continue to work closely with the Treasury as it undertakes these new initiatives. We will continue to use all of the powers at our disposal to mitigate credit market disruptions and to foster a strong, vibrant economy.

 日付しか書かれていないので、何時にアップされたのか不明。確実なのは米下院が一連の不良債権の買い取りを柱とする金融関連法案を通過させた後だということです。それが米東部時間の午後1時過ぎくらいでしたっけ。しかしそれから直ぐに出たとは思えない。

 多分下院の通過にもかかわらず、ダウが157ドル下げた後なのではないか。政府がとりあえずやれることはやった。不良債権の買い取りの方式(価格算定方式)が決まって、実際に買い取りが始まるには1ヶ月はかかる。にもかかわらず市場の不安感は収まらずにニューヨークの株価は下がった。週末に「先行き不安感」が高まることは明確である。

 この声明は、「中央銀行であるFRBが市場を見守るし、やれることは全部やりますよ」という意思表示、決意表明です。「use all of the powers at our disposal」(使いうるあらゆる権限を使う)ということで何があるかというと、金利操作(利下げ)と流動性供給、それに欧州や日本との歩調を合わせた行動(協調利下げ、協調介入など)。


2008年10月04日(土曜日)

 (07:30)米下院で修正されて451ページ(当初は2ページ半)に膨らんだアメリカの金融救済法案は、民主党から前回投票時(29日)より賛成が32票増えて172票、共和党から同26票増えて91票、合計263の賛成票(反対票171 前回は賛成205反対228)を集めて議会を通過しました。ブッシュはこの法案に直ちに署名、法律となった。

 しかしそれまでダウで一時は313ドルも上がっていたニューヨーク株式市場の株価が落ち始めたのは、まさに通過の瞬間からでした。「噂で買い、事実で売る」の典型例。引けはダウが−157.47ドル(1.5%)、NASDAQは−29.33ポイント(1.48%)。一日のチャートを見ても分かるのですが、たった一日の間に470ドルもの悪しきリバーサル。

 これは市場関係者にとってもショックだったでしょうが、賛成に鞍替えした下院議員も驚き、かつ「騙された」と思った人もいたかも知れない。しかし否決していたら、月曜日(777ドル以上の下げ)の二の舞になったかも知れない。そういう意味では、通過して良かったとは言える。

 午前中は勢い良く上がる市場を見ていて、「持続するには危うい市場だな」と思った原因は、出てくるアメリカ経済に関する指標があまりにも悪いからです。朝方発表された米9月の雇用統計は、失業率こそ6.1%で横ばいだったのですが、注目の非農業部門就業者数は10万人ちょっとの予想にもかかわらず15万9000人も減少した。

 これは過去5年間でもっとも早い就業者数の減少ペース。重要なのは、就業者数の減少が製造業、建設業から数多くのサービス産業まで幅広く広がっていること。雇用の減少を伝えるニュースは今月も続いていて、アメリカの雇用情勢に今のところ改善の兆しはない。GDPの約7割が消費で出来ているアメリカ経済にはこれは痛い。失業の増加は、消費者の購買力の低下を実際にも、気分的にも招く。

 自動車の販売不振は木曜日の記事で触れました。工場受注は4%も減少した。今見ているNHKのニュースは全米で学生が「教育ローンの更新を断られている」というもの。ちょっと状況は悪い。何回も書いているのですが、一番の問題は、金融が目詰まりしているということです。これは解消しないと経済は再び回り始めない。目詰まり具合の判断という面で私が見ているのは、TEDスプレッドなどです。

 市場の混乱の中で、契約の混乱も起きている。「米銀行大手6位のワコビアが同7位のウェルズ・ファーゴと合併することで合意」というニュースには、「あれ」と思いました。なぜならワコビアはたしか連邦預金保険公社のお墨付きで先月29日に、同社の銀行業務を同業大手シティグループに売却すると発表したばかりだったからだ。ニュースを聞いて先ず思ったのは、「あの契約はどうなったのか」だった。

 合意は、その時のシティとの合意を撤回し、ワコビアの銀行業務ばかりでなく証券や資産運用業務なども含めて全体を対象にしてウェルズ・ファーゴと合併する、というもの。そりゃシティは怒りますよ。「シティ以外との交渉を禁じた契約に明らかに違反する」としてワコビアにウェルズ社との合併協議の中止を求めた。ということは訴訟に発展する可能性もあり、ワコビアをめぐる金融再編の行方は不透明だ。

 3日の株式市場の午前中の株価上昇は、このワコビアの政府の支援を受けないウェルズ・ファーゴとの合併の動きに対する評価の面もあった。しかしその株価も終わってみれば下落で後味の悪いものに。ワコビアとウェルズ社の合併が実現すれば、総資産は約1兆4200億ドル(約150兆円)でシティなどに次いで全米4位になるというが、これは訴訟の行方次第だ。

 私が今気にしているのは、ペロシ下院議長が今週の初めに骨格7000億ドルの救済法案に関して、「これが国民の税金が投じられる最後のケースだ」と述べたこと。29日だったと思った。しかしどうだろうか。今の状況を見ていると、やはり最後は日本が追い込まれたように金融機関への直接資本注入が必要になるような気がする。

 その時の議会の議論、そして米国民の反応はかなりシャープなものになる可能性が高い。


2008年10月02日(木曜日)

 (22:30)先輩への贈り物を買おうと、以前から入ってみたかったヤマダ電機の新橋店に入ってみました。5時前だったので、店の中は静かですが、出来たばかりなので綺麗です。

 入って一応上から下まで見た後で、「ここではPCなどがないな」と気が付いた。聞いたらその種の製品は機関車サイドのヤマダ(デジタル館)にある、と。そう言えばあそこもヤマダになった。凄まじい勢いでヤマダは都心攻め込みを始めている。新橋にはヤマダは知らないうちに2店もある。

 フロアをそれぞれ見ながら、「これはデパートなどに脅威になる」と思いました。何でも揃っているのです。並べ方がデパート的ではない。製品と製品の間隔が狭い。例えば有力メーカーのペンなどでもです。しかし一応は揃っている。気が付いたのは、中国語のカンバンがやけに目立つこと。中でも「銀聯歓迎」の各種。そう言えば、私の後ろにいた家族連れも中国語で話をしていました。世界では銀聯などデビット・カードが益々主流に成りつつある。

 ヤマダを見た後でスタジオでウォール・ストリート・ジャーナルを見たら以下の記事。

Federal Reserve officials are weighing further interest-rate cuts, even if Congress passes a $700 billion rescue plan, in the face of a deteriorating economic outlook and severely strained financial conditions.

The Fed's willingness to consider additional cuts marks a turnaround from the past few months, when soaring food and energy prices turned its attention to inflation risks. At a regular September meeting, after oil prices had receded, officials still declined to move the central bank's federal-funds target rate from 2%.

A reduction in rates is still far from certain, in part because of inflation worries. But in just the past few weeks, as the credit crisis pummeled the financial system, economic data have become steadily worse, raising fears of a recession.

 この文章にもあるのですが、これは実体経済の悪化を受けたもの。米9月の新車販売が100万台割れとなり、17年ぶりの低水準になったのはある程度予想されたとはいえ、やはりビックリする。アメリカはここ10年ほどだいたい年間1600万台の車が売れてきた。月間100万台以下になったということは、年間1200万台売れないと言うことです。前年同月比割れは11ヶ月連続。

 衝撃だったのは小型車にも販売不振の波が及んできたこと。自動車ローンを得られない、または条件が厳しくなった人が増えた結果です。こうした流れの中で、トヨタが32.3%の販売減、ホンダが24.0%の販売減。GMやフォードは苦しくなった。

 日経の夕刊には、「米GE、1.5兆円増資」という記事がある。金融機関ではなくても、金融に絡んだ事業をしている企業は厳しくなっている。GEがそうです。それにしても、この増資にバフェットが30億ドル出すという。バフェットはゴールドマンにも50億ドル出している。一体いくらもっているんでしょうか。


2008年10月01日(水曜日)

 (22:30)まず連絡です。先週日曜日の「新BSディベート どうなる原油価格」はなかなか評判が良かったようで、まず以下の日程で再放送します。NHKの担当者の方から連絡がありました。

BS−1/10月5日(日)
第1部  13:10〜14:00
第2部  14:10〜15:00

 それと同じ日曜日10月05日は、BSジャパンの新番組である「世の中進歩堂」のキックオフの日です。午後8時30分から。この番組は本当に面白いですよ。CMの女王(?)城間さんとやっているのですが、私自身にとって番組そのものがすごく勉強になる。「ああ、こんな事もあったんだ、こんな技術もあるんだ」と、見ている方にも毎回驚きの連続になるはずです。

 私には考え方の基本のようなものがあって、「世の中を変えているのは技術だ」というものです。それにぴったりの番組で、私が今までいろいろやった番組の中で「毎回勉強になる」と常に思うのはこれが最初です。

 相方が”女優”というのも刺激的。今まではアナウンサーの方が多かったのですが、びっくりしたのはやはり女優は台詞覚えが速い。私はどちらかというと同じ事を機械的には言えない、「こう言って」と言われると決してそれが言えないタイプ。その点、彼女は凄いですよ。

 月曜日からまた仕事をしよう、新しい技術を知ろうと思ったらこの番組です。

 ところで、今朝話題にした「時価会計見直し」と「預金に対する連邦保険の金額の上限引き上げ」に関しては、私が大阪から東京に移動している間に動きがあって、前者についてはSECが時価会計の適用方法を見直して、弾力運用の方向に舵を切ったようです。今の市場で出来る値段(有価証券の出来値)は、しばしば突飛値です。投げが投げを生んでいるような所がある。

 直近の値段だからといって、その値段が時価評価に使われると、金融機関の損失は異常に膨らむ。今まではそれでも「直近の値」が手がかりだった。それをSECは「正常な取引で成立した売買価格に基づく」とした。基本的な認識は、「現在の環境は公正な価格を決めにくい時期」というもの。

 では何で評価するのか。「企業内部での独自見積もりを容認する」「対象商品が長期保有目的かなどによって評価が変わりえる」という考え方。日本の金融機関の足を引っ張ったアメリカの制度が、今は明らかにアメリカの金融システムの重石になっている。だから変えよう、ということでしょう。

 預金保険額の引き上げに関しては、イギリスも実施の方向で、こちらは現在660万円を940万円まで引き上げる方針という。アイルランドは6金融機関の預金を全額保護と発表。依然として各国中央銀行の懸命の努力が続く。


2008年10月01日(水曜日)

 (09:30)今日から10月ですか。昨日一緒に軽く飲んだある企業の元経営者が、「あのアメリカの株価暴落が一日遅かったら良かったのに」と話し始めた。日本の企業にとっては上期決算は9月30日。その日の前日(29日)にニューヨークの株価は777というパチンコだったら大当たりのような急落(ポイントとしては史上最大)。東京の株価も日経平均で500円近い下げ。

 企業は期末に保有証券の評価換えもする。値段が前期末より評価が下がったら、それをちゃんと決算に表示し、入れないと行けない。時価会計ですから。昨日たまたま見たBBCで英野党・保守党の党首が「時価会計システムの持つ矛盾」を盛んに指摘していたし、米議会の議論の中でも「時価会計ってどうなのよ」というものもあったし、法案にも潜り込んでいたようだ。しかし否決された。しかし、世界各国でこの制度は依然として保持し続けられている。もう簿価制度に戻した方が良い、という意見も必要なのだが。

 会計制度に基づき、日本の企業の多くは9月30日の引けの安くなった株価で保有証券を評価をする。決算の見栄えが悪くなるわけです。むろん最初から良くはないが、9月30日当日の下げで一段と悪くなった。元経営者は現役との会合を終わって、それを嘆いているのです。

 昨日の早朝に文章を書いて以来30時間以上が過ぎて、その間に起きたことと言えば、29日のニューヨークの株の下げが結局777ドル(%では7%くらいで、これは歴史的に見ればそれほど大きくはない)で、その後東京などアジア株が大きく下げて引けた後、30日の欧州当たりから反発の気配が広がり、30日のニューヨークの株価は多分ドレッシングもあったのでしょう、ダウで485.21ドル、Nasdaqで98.60ポイント上げたまで。

 しかしウォール・ストリート・ジャーナルの30日のニューヨーク市場の株の上げに関する表現は、「a whiplash-inducing rebound」。「whiplash」とはなんぞやと辞書を引いたら、「むち先のしなやかな部分,むちひも」とあった。なるほど、あくまでこの上げは昨日大きく下げたあとの「むち先の遊びのような反発」という印象ということか。

 株価の動揺を見て、「今度は議会も動くだろう」という楽観論が台頭しつつある、ということですが、私が気になるのは「アメリカにおけるリーダーシップ・クライシス」です。ブッシュも、共和党指導部も、ペロシ下院議長など民主党指導部も、そして両大統領候補も、米下院の一般議員の投票行動に十分な影響力を与えられなかった。一般議員が気にしたのは、11月4日に迫った選挙だった。

 今朝の新聞には、議席確保が難しかった議員ほど、「NO」を投票したという分析があるが、これは先週以来議員に地元から来ているメール、電話などが圧倒的に「ウォール街救済に反対」という声だったことを考えれば理解できる。

 昨日のニューヨーク・タイムズに私が先週以来言っていることに非常に近い表現があった。

the difficulties of dealing with fast-moving emergencies through the slow-moving and inherently political legislative process.
 私は月曜日の日経CNBCの番組で、「先行する市場、遅行する政治」と言ったのですが、今回のアメリカの民主的プロセスによる下院審議と投票はそれをよく表している。そういうことからも、火曜日のアンカーでは、「市場のスピードにまだ近い早さで動けるのは当面は中央銀行だけ。政治プロセスに時間がかかる間は、中央銀行が世界の金融システム、信用システムを支えないと」という話をした。

 30日のニューヨークの株価の反発には、「ワシントンは今回に懲りて、今度は金融救済法案を通すだろう」という楽観論が入っている。これに関しては、議会指導者やホワイトハウスの中には「下院で拒否された法案に微調整を加えるだけで、今度は通るのではないか」という楽観論もあるという。微調整とは何か。

 オバマもマケインも賛成し、そして13票(賛成は205だったが、法案通過に必要なのは218)を賛成に回すには、例えば預金に対する連邦保険の金額の上限を今の10万ドルから例えば25万ドルに引き上げる、などの案が出ているという。預金をしている国民には安心材料だ。また失業保険給付の数ヶ月間に渡る増額もアイデアだという。

 いずれにしても、「リーダーシップ・クライシス」は世界的な現象であるとしても、依然として軍事、経済で世界最大の国家であるアメリカで、しかも今の世界的な経済混乱の根っこであるアメリカでこれが起きているのは危険なことです。「世界に対して責任がある」ということは分かっているにしても、議員がその地位を与えられているのは「選挙区の選挙民の投票行動」からであって、マーケットからではない。議員は落ちればただの人というのは、日本でもアメリカでも同じ。

 ニューヨークの株の反発で始まった東京の株価も力強い動き。しかし暫く先を見ると、結局「世界的に信用システムは正常化するのか」ということでしょう。今の経済はすぐれて「信用のリンク」で出来ている。マネーが信用のリンクの中を移動する中で、商売も雇用も生まれている。

 その「信用」が傷ついたままだと、流れるような経済の動きは無理となり、極端な場合にはキャッシュ・ベースの決済になり、経済活動は大きく縮小する。なくなりはしません。しかし縮小する。縮小すれば成長率は著しく低下し、多くの職が失われる。

 その信用を補完しているのが今は各国の中央銀行ということです。欧州でも多くの民間銀行が国有化されたり、公的資金を注入されている。デクシアに対するフランス、ベルギー、ルクセンブルクによる64億ユーロの公的資金注入などが最新の動き。欧州では28日にフォルティスへの112億ユーロの公的資金注入が決まったばかり。アイルランドも国内の六つの銀行の預金と社債を全額保証した。イギリスではB&Bが国有化された。

 この大騒ぎの中であまり報道されていないが、ロシアなどでも大規模な救済劇が展開されている。株式市場そのものに対する救済策も。「信用」に対する疑念が晴れるのには何が必要か。その視点が今後は重要になる。株価の上げ下げとはまた別の視点だが。




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