<収録後記(6月16日)Cyberchat>

放映=6月15日(日) テレビ東京午前9時から

ゲスト=南部靖之パソナグループ代表

 もう40回近い回数をこなしているものの、インタビューの相手にインターネットで本番の前に挨拶したのは始めてでした。

 「パソナ、新しい会社だ」「きっとホームページを持っているに違いない」
 ありました、ありました。NTTのURL SQUAREで「人材派遣」と絞り、上から見ていったら「パソナ」の名前は二つ。

 実は小生、正直なところ「テンポラリー」の名前の方がこの会社はイメージしやすかった。「パソナ」と最初聞いたとき、実はピンときませんでした。イメージがつながったのは、「人材派遣」と聞いたときでした。インターネットのホームページを見てさらに納得。そこで、パソナのフロントページを見ながら思いついたのは、パソナのWEBMASTERにメールすれば、南部代表に届くだろう...。それが13日夜。

 代表がメールを見たのは、タイから帰ってきた14日だそうです。「R」(リターン・メール)は「驚きました」で始まっていた。ですから、インタビューの前にインターネットで挨拶するテレビ関係者はまだ少ないのでしょう。しかしこうしたアクセスの仕方が徐々に増えるかも知れない。

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「人材派遣」。古めかしい言葉ながら、今の先進国経済の抱える大きな問題に一つの回答を与えるものかも知れない。つまり「流動化せざるを得ない雇用」への対処措置として。

 先進国における「雇用の流動化」は二つのルーツがあると思う。一つは産業構造の大きな変化。もう一つは、著しい技術革新。むろんこの二つはからんでいる。

 前者は、冷戦の終結の影響が大きい。市場経済には、新たに30億人の労働力が放り込まれた。賃金格差故に、先進国(OECDクラブ国)で作って採算の取れるものは限られてきた。当然産業構造は大きく変化する。産業構造が変化すると言うことは、消える職と生まれる職があるということだ。ひどいミスマッチが生ずる。日欧が直面している問題だ。

 後者の技術革新も、雇用の流動化を促している。トンカチの仕事を、コンピューター制御マシーンがやる。当然トンカチを持っていた人は職を失う。彼らが他の場所に同じ職を見つけださねばである。技術は、国境を越え、「経済合理性」という法則をともなって世界に伝搬する。

 南部氏率いるパソナグループの創業は1976年。発想としては「女性の社会進出支援」という非常に身近なところから出発している。しかし、やはりすべての伸びた商売と同様に、社会的必然性があったのである。その後の伸びはすさまじかったし、今後も大きく伸びる可能性を秘めているといえる。

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 南部代表と会ってまず感じるのは、「若さ」である。歳は既に40を遥かに越えているのに、35−36才に見える。人に与える印象は非常に良い。優秀臭もない。それと丁寧。番組が終わった後、自分が最近書いた本である「自分を活かせ!」(講談社刊)に自らサインしてくれたのだが(それも、スタッフ一同に)、その字がまた丁寧で奇麗である(実に羨ましい)。

 番組ではしばし、パソナが中心となって神戸復興の願いを込めて作られた「HARBOR CIRCUS」が話題に上った。神戸を連想させる「港」と、名前を聞いただけで楽しくなる「サーカス」。この二つの名前の結束で人々の連想をかき立てて、神戸の街に活気を取り戻そうと言う発想。この総額20億円のプロジェクトには、日本の名だたるベンチャー企業の創設者が参加しているという。そうマードックと組んで日本の放送業界に変化のきっかけを作ろうとしている孫 正義氏も参加とか。

 「消費はしばしば欲望と同時に“想像力”の産物だ」と思う。全く生存に必要ないくだらないものが突然売れる。サルの世界にはないことだ。遺伝子で2%も違わないチンバンジーと人間の二つの社会が生み出した膨大なGNP格差を考えれば、人間がいかに想像力を膨らませながら経済のパイを拡大してきたかが分かる。ベンチャーとは恐らく、「新たな想像力の商売としての結実」なのだと思う。古い企業は古い社会のニーズを満たし、ベンチャーは想像力を働かせながら新しいニーズを掘り起こし、さらには作り出していく。むろん、ある個人の「想像力」が社会(つまり他の多くの人間の)の想像力、ニーズと合致しなければいけない。ただ勝手な想像は、周囲の人間に借金と不幸を残すだけだ。その差は、恐らく非常に微妙なのだろう。

 とまれ、「海に浮かぶレストラン」などなど、南部代表の「想像力」は衰えを知らない様子。「夢」と「想像力」を消費者に与えられて、それが“売れる”のならそんな素晴らしい人生はない。                       

                                 (ycaster 96/06/13)



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