<エクセル中毒症-Cyberchat>

 日本中のオフィスで、「エクセル中毒症」とも呼べる病気が蔓延している。(^_^)(^_^)あの横線、縦線が入ったスプレッド・シートを開き、そこに少しの数字を入れておけば、「自分は仕事をしている」と自分勝手に思う一群の連中が患者の中心だ。別の一群はもっとひどい。彼らは、意識的にも無意識にも「(エクセルさえ開いておけば)自分は、廻りから仕事をしていると見られるだろう」と期待する。

 「患者」だから、それを見たり直したりする医者(上司)が必要だが、日本のオフィスにはほとんどいない。部下が、または派遣の人がエクセルと格闘しているのを見ると、「ああ、彼らは仕事をしていてくれるのだ」と思ってしまう。そういう上司が大部分だ。computer illiteracy というやつだ。「word」や「一太郎」は、字が読める人間(日本のオフィスの上司だったらそんなことはないだろう)なら覗き込めば一発でその部下が何をしているか分かる。しかし、スプレッド・シート上の数字の羅列は少し違うことをしている人にはわかりにくいものだ。医者不在だから、中毒症状が進むとエクセル・シートを眺めながら20分も腕組みする連中が現れる。何をしているのだろう。日本のオフィスでは、誰も「もしもし」と言わない。

 「エクセル」とはなかなかスグレモノの名前だ。「word」などというそのものの味気ない名前と比べて、「excel」を辞書で引くと「(他に)まさる」「(他より)すぐれる」とある。そうか、「エクセル」を使いこなせるのは、「まさった証拠」というわけか。(^_^)(^_^)で、こんなことも起きる。プロフィット・センターを期待されたセクションで一番評価されるのが、「儲ける人」ではなく「エクセルを使え、周囲の人間に教えられる人」というような。ただ便利なだけなのに。変な評価体系だから、プロフィット・センターの連中がエクセルの腕比べをしたりしている。延々と。チャートの色分けの綺麗さを競って。違うだろう....と思う。これはセクションにおけるエクセル中毒症だ。「とっとと儲けろ.....」と言いたい。

 しかし、日本のエクセル使用者は本当に「その人だけしか出来ないシート」を作っているのだろうか。ディーリング・ルームに行く。東京、ニューヨーク、ロンドンの外為市場のドル・円からなにからあらゆる通貨の寄り、引けを延々と打ち込んでいる奴がいる。私はそれを見る度に頭がくらくらする。そんなデータはいくつものオンライン業者が割安でいくらでも提供してくれている....と。見ると、その隣でも同じ事をやっている人間がいる。だったら、それ専門の人を社内で一人設けて、データをシェアしたらどうだい...と。

 社内や、社外の割安なデータベースや、それにインターネット、パソコン業者が持っているデータを一人一人が入力したら、日本経済の生産性は著しく低下するだろう。ましてやその企業は、「エクセル倒産」を遂げるかもしれない。「excel excess」というわけだ。コンピューターは導入すればそれだけで生産性が上がるのではない。うまく使って生産性が上がるのである。「医者」がいない日本のオフィスでは、中毒患者が跳梁跋扈している。「君は鉛筆をうまく使えるね....」と誉められる大人は誰もいない。しかし、実はコンピューターは多くの場合ツール以上のなにものでもない。
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 ここまで書いてきて、一つの本を紹介しよう。「銀行員は EXCEL をこき使う」(金融財政事情研究会)。そういう意味で、痛快な本である。なにせ「こき使う」だから、「使われる」ことなど念頭に置いていない。どう使ったら日本のオフィスを効率化できるかを念頭に置いている。まあ「銀行員」とあるけれども、二巻あって一冊は「融資編」だからノンバンクあたりの人しか使えないかもしれないが、「渉外編」は他の業界の人でも使えるかもしれない。フロッピー・ディスクがついていて、必要な人には役立つでしょう。

 この本に一つ注文があるとすれば、これからはおそらく主流になっていくと思うエクセル・シートに対する「外部データの取り入れ」に関して、一つの章も用意されていないことだ。別に自慢でも何でもないのですが、小生はエクセルを使うときにデータを自分で打ったことは一度もない。そういう仕事をしてはいなかったということもあるが、全部契約している外部データソースやインターネットからの流し込み(データの validity は検証します)でエクセルを使っていた。スタンド・アロンなソフトウエアとしての excel を強調しすぎている。やっぱし、ネットワークの中でソフトウエアを考えなきゃ。

 ははは、筆者の方々には釈迦に説法でしたな。......あれれ、よく見たら本の題名は「銀行員は EXCEL をこう使う」だった。ははは。で皆さん、「エクセル中毒症」には気をつけましょうね。 (ycaster 99/02/22)



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